時計のデジタル表示は18:30.
18時少し前に、テイアの店に行こうとしていたのに、完全に寝坊をしてしまっていた。
考えている時間は無い。
私は、急いで寝ぐせだけを直し、駆け足でホテルを出た。
テイアは18時からお店の前に立つ。
早い時には10分足らずで客を捕まえ出て行ってしまう事もある。
テイアが他の客を捕まえるまでに間に合わなければ、私はもう1日恐怖を味合わなければいけない。
私はトライクを拾い、乗り込んだ。
携帯電話の画面で時計を見ながら、もう一度『ウソ』の復習をする。
1、昨日はテイアと別れた後、マニラの空港まで行った。
2、空港でチケットと携帯電話を盗まれたので飛行機に乗れなかった。
3、アキラさんにお金を借りるためにアンヘレスまで帰って来た。
4、携帯電話が盗まれてしまっていたので、テイアからの電話に出る事が出来なかった。
『ウソ』に矛盾は無い。完璧な『作戦』だ。
携帯電話の画面を見ると18:40。
私は『テイアがまだ他の客に取られていない』事を祈った。
その時に、私は、初めて、ある異変に気付いた。
。。。。。。。。。。。
(‘ω’)
なんで、時間が分かるんだ ❓ (‘ω’)
何を見て、時計を確認してるんだ ❓ (‘ω’)
プギャー ( ゚Д゚)
私は盗まれたはずの携帯電話を、今、持っている事に気が付いたのだった。
テイアに、私が携帯電話を持っていることに気付かれたら、全ての『ウソ』が瓦解する。
隠そうとしても、半ズボンのポケットには隠し切れない。ポーチは既にアキラさんに預けてしまっているので持っていない。
靴の中には入るはずも無い。
かといって、ホテルに引き返す時間は無い。
私は大声で『ザ ワールド』と吠えた。

しかし、時間は止まらない。
そもそも、私には『スタンド』は付いていない。
トライクは無慈悲にもテイアの店の前に到着してしまう。
携帯電話がバレてしまうかもしれない。
その前に、テイアが既にいないかもしれない。
もし、いたら、怒るかもしれない。
ひょっとしたら、喜んでくれるかもしれない。
不安と期待を抱きながら、テイアの店の前を確認する。
店の入口には、背もたれの無い椅子に肩を落としてだらしなく、座っているテイアがいたのだった。
続く
追記
良かった( ;∀;)
まだいた。
私はテイアに駆け足で近づいて行った。
私を見つけたテイアは、物凄い形相で私を睨んできた。
私は取り敢えず『ウソ』をつく。
空港で飛行機のチケットを盗まれて、飛行機に乗れなかったんだよ。
ドアマンや周りのスタッフ達も、『帰って来て、良かったじゃないか?』『また、迎えに来たぞ!』みたいな事を言って、喜んでいる。
『ウソ』が通じたか通じていないか分からないが、
取り敢えず、店に入って1杯飲もう。
説明するから 。
と、テイアを店の中へ誘おうとするが、テイアは
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と、店の入口で繰り返し叫んでいるのだった。
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