アンジェリカは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のアキラを除かなければならぬと決意した。アンジェリカには政治がわからぬ。アンジェリカは、バーのウエイトレスである。
酒を運び、客と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明アンジェリカは友人からの連絡を受けアキラに何度もメッセージを送っていた。
自宅を出発し、野を越え山越え、2Kmはなれた此のWSの街にやって来た。
アンジェリカが受け取ったメッセージの内容は『アキラがマッサージの女と歩いていた。』と云うものだった。
バーホッピングは許したが、パロパロまでは許してはいない。
『事の真相を確かめなければいけない。』
アンジェリカはそう思いアキラの常宿しているスコアバーズホテルへ向かうのだった。
アキラは困惑していた。
受け取ったメッセージには、
『お前はマッサージの女と歩いていたか?』
とあった。
確かにマッサージは呼んだ。一緒に歩いていたのも事実だ。
しかし、共に歩いていた時間はわずかに1分程で、ホテルで落ち合う約束をして、すぐに別々に歩き始めたので見つかる筈は無いと思っていた。
『なんと言えば誤解が溶けるのだろうか。』
する事はしたので、実際には誤解では無いのだが、ここは誤解で押し通さなければいけない。
証拠は残っていないので逃げ切る事は簡単だと思った。
しかし、今この瞬間だけを簡単に逃げ切ったところで、彼女の中で疑惑が残ったままだと今後の2人の関係に悪影響が出るだろう。
『どうにかしてこの疑惑を完全に消し去らなければいけない。』と頭を働かせる。
アンジェリカは既に此方に向かってきているので考える時間はさほど残されていない。
アキラとアンジェリカの意思の疎通は英語を用いるほかは無い。
目的がはっきりしている事柄についてはおおよその会話は成り立つが、細かな感情などの表現にはやや稚拙さを感じる事は否めない。
その事が吉と出るか凶と出るかはその場になってみないと分からないのである。
アキラはアンジェリカとの関係を続けていきたいと考えていた。
アンジェリカに通じるかは分からないが、
『背中が痛かったのでマッサージを受けていただけと云う事にしよう。』
と、心に決めて、ホテルの出入口でもうすぐ到着するアンジェリカを待つ。
トライシクルで到着したアンジェリカはさほど怒っている様には見えなかった。
静かな怒りが逆にアキラの精神を蝕む。
『お前は、今日、マッサージ嬢を呼んでたな。』
『背中が痛かったからマッサージをして貰ったんだよ。』
『その後、ソクソクしたのか。』
『マッサージだけだよ。』
実際にあった事は証拠を出せば実証する事も出来るが、無いものを無いと証明する事は、【悪魔はいない】と云う証拠を出せと言う様なものだ。
私さんも帰国してしまっているので私さんの責任にする事も出来ない。
アンジェリカの疑惑を拭いされずに窮していたアキラに思わぬ援軍が入った。
ホテルのドアマンが2人の会話に突然参入してきたのである。
『こいつは、確かにマッサージ嬢と部屋に入った。
だけど、1時間足らずでマッサージ嬢は帰って行った。
もし、ソクソクをしたのなら、1時間半は部屋にいた筈だ。
こいつは、本当にマッサージだけを受けて、ソクソクしないで返したのは間違いない。』
英語とタガログ語を混ぜながらドアマンは必死にアキラの擁護を続ける。
アキラは全てをドアマンに任せて、事の成り行きを見守る。
暫くアンジェリカはドアマンの云う言葉を聞いていたが、最後には【ほっとした表情】をアキラに向けて、
『誤解していてごめんね。』
と言った。
『問題ないよ。こっちこそ心配させてごめんね。』
と言いながら、アキラはアンジェリカの肩を抱いて自分の部屋に2人向かう。
アキラが振り返ると、ドアマンは腕を突き出し【グーサイン】をしながらウインクをしていたのであった。
終わり
追記
アキラ 『後でドアマンに500ペソあげました !(^^)! 』
私 『それで、アンジェリカは納得したんですか?』
アキラ 『その後やって、○○を見せて、【ね、出たでしょ。】って言ったら納得しました!(^^)!』
正真正銘の【クズ】だと思った(´Д`)。

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コメント
到着する前はテキストで
Who the fuckin girl??
と
プータンイナモ!
の連発で怖かったです笑
今思えばドアマンには1000ペソあげても良かったと思ってます笑